■規模の小さい地元農家(家庭菜園で野菜を作っている非農家を含む)が農産物を販売しようと考えるとき、大きな支障となるのが流通です。
自家消費が目的で農薬をほとんど使わず、手間をかけて育てられる少量多品目の農産物は、既存の流通の仕組みに乗せることが難しく、多くの場合には販売にまで至らないのが現状です。
農吉の集荷・配送システムは、少量多品目の農産物を「集荷」して自社便で配送することにより、配送コストを抑え、新鮮なままお客様にお届けすることを可能にしています。
■農吉の出荷者さんは、ほとんどが「ご近所の方」です。そのため集荷場は、地域の人が集う「場」としても役割を果たしています。
■出荷者さんと店舗(スーパーの「農吉の野菜コーナー」や飲食店など)を直接つないでいるため、出荷者さんにとっては自分の野菜がどこでどのように販売されているのかが見えやすく、作る意欲の向上に結び付いています。
毎年作付けを増やしてくださる出荷者さんもおられ、地域の田畑の維持拡大にも貢献しています。
■農吉のある庄原地域は、大正時代に日本酪農の礎を作った場所です。冷涼な気候と平坦な地形を活かして、かつては酪農が盛んな地域でした。しかし現在は残念ながら、規模は縮小の一途を辿っています。
この地域で、地元の生乳を使ってチーズを作ることは、地域の酪農を応援することになるのはもちろん、歴史的に見ても意義のあることと考えています。
■日本は、世界的に見てもユニークな「発酵文化」を持っている国です。味噌、醤油、みりん、酢、漬物、日本酒。身近な食材の中に、「菌」の助けを借りて、時間をかけて作られているものがたくさんあります。
チーズもまた、生乳を発酵させて、時間をかけて作られる食材です。日本で育った牛の乳を使い、日本の空気と時間の中で作られるチーズが、日本の発酵文化に新しい貢献をしていくことを願っています。
実際に、近年の日本のチーズの進化は目覚ましく、著名な国際コンクールで入賞するチーズが続出しています。農吉(チーズ工房「乳ぃーずの物語。」)のチーズもがんばっています。
■農吉の原点は、保育所です。地域の子どもたちです。
子どもたちを、「農」のある環境で育てたいという思いが、最初から中心にありました。
農吉ファームでは、保育所の給食に使う米や野菜を、自社で育てています。ゆくゆくは、子どもたちや保護者の皆さんと一緒に、ファームを運営してみたいと夢を持っています。
■子どもたちの給食に提供するだけでなく、都市部へ向けた野菜の供給も行っています。出荷者さんたちの野菜とともに、農吉ファームの野菜も週に3回、自社トラックで直接配送しています。
■農吉のある庄原地域でも、農業の後継者不足が懸念されています。
次世代に「農」を繋いでくれる人がいなければ、地域の田畑は荒れ、地域経済は回らず、住みにくい地域になってしまいます。さらに問題はこの地域だけではなく、近隣地域や都市部にも波及していくと考えられます。
そういったことももちろんありますが、そもそも「農」は素晴らしいものです。太陽、土、風、水、虫、微生物…自然のすべてと、人間(子どもたちから、おじいちゃん・おばあちゃんまで)が、共同作業で食べ物を育てる仕事。人間が、自然の中で謙虚に生きるべき存在であることを教えてくれます。
農吉ファームでは、できるだけ農薬や化学肥料を使わず、自然に逆らわず、しかも生業として成り立つ「農」のモデルを作りたいと考えています。
体ひとつでこの地域にやって来る人がいても、農吉ファームのやり方で農業をすれば、地域の人とともに生活ができる。そんな仕組みを作りたいと、日々奮闘しています。