「ちいな組は、このまま雨が上がったら、予定通り借りているバスで備北丘陵公園に、どんぐり拾いに出かけます。」
「いなほ組は、午前中はとび箱、室内遊び。午後は、薪ストーブでお米を炊いておやつに食べます。」
「今日の給食は、しらす丼、根菜たっぷり汁、りんごです。」「アレルギーの子は?」
「病院に行ってから登所の子が、今日は3名います。」「Yちゃんは、1週間くらい休んで、久しぶりの登所になります。」
「今日は、職員配置の変更はないですね。」
庄原保育所は、自然豊かな広島県庄原市にあります。
近所にある大きな公園や自然の中での活動、園庭や地元で採れるお米や野菜を使った食育などが、
ふだんから保育所生活にあふれています。
「今日も一日、よろしくお願いしまーす!」
いよいよ、一日が始まります! いなほ②組のMさんと、部屋の前でちょこっとミーティング。
Sちゃんが、家からナンテンの実を持って来てくれました。
「かわいい!クリスマスみたい。クリスマスまで飾っとく?」
Sちゃんが、以前クリスマスまで飾りたいと言っていた、
花の横に飾りました。
子どもたちが、続々と登所してきます。
あれ、Hくんは、今日はお母さんと離れたくないみたい…
ちょっと涙が出ちゃうHくんを、
右代谷さんと、いなほのお友達が励まします。
「お母さんがよかったね…お母さんはお仕事?」
「うん、しごと。」
「今日の朝ごはんは何を食べたん? 私はねぇ…」
子どもの気持ちに寄り添い、一番の理解者であることが伝わるように言葉にしていきます。
気持ちを切り替えて、今日一日が楽しく過ごせるように!
Mちゃんも、お母さんのお袖を離したくないようです…
お母さんの後ろ姿が見えなくなるまで、一緒にお見送り、です。
「お仕事、がんばってねー。」
「アルプス一万尺」が流れたら、始まりの合図です。
「あれ、みんな、今日は元気がないよー! もう一回!」
だんだん、みんなの声が大きくなってきました。
「では、今日のお当番さん、歌いたい歌を決めてください。」
お当番さん2人で相談。「今日は、『おりづる』にします。」
みんな「良いです。」
自発的に輪唱パートを決め、気持ちよく歌いました。
「Hちゃん、手がまっすぐ上がってとってもきれい。すごいね!」
みんなが思わず真似したくなるような、きっかけをつくります。

「今日は、このあと『やってみ跳び箱』です。
跳び箱、前にやったことがある人~? やってみたい人~!
大事な約束があるので、ホールでお話します。
しっかり聞いてくださいね。
難しいけど、できる!と思ったらできます。挑戦してみよう!
準備体操のあと、日々続けている「やってみマラソン」をして、身体を温めます。
いよいよ一人ずつ、2段の跳び箱に挑戦です。
「やったね! 上手になってきた!」
外は良いお天気。
(軒下では、さつま芋の蔓(つる)を編んで
リース作りの準備中です。)
子どもたちと一緒に遊んだり、
見回ったり。
身体を動かすのが好きな子、
集団遊びが好きな子、一人遊びが好きな子…
みんな、ひとり一人違っています。
「う し ろ や さーん!」
遠くから呼んでいる子どもたちの声のトーンを聞けば、子どもたちが右代谷さんを信頼していることが、すぐに分かります。
ちなみに、農吉の保育所では、子どもたちは保育士を「先生」と呼びません。「〇〇さん」と、名字で呼びます。(ニックネームで呼ぶこともあります。)
これは、保育士と子どもたちが、指示をする人/される人、教える人/教わる人…という関係ではなく、お互いに育ち合う・学び合う・助け合う、「対等な立場」であることを表しています。
保育士同士も、同じです。

子どもたちの日常を、写真に収めたり。
庄原保育所では、半年に1冊、子どもたちの「アルバム」を作っています。
子どもたちの成長を、保護者の皆さんにお知らせするため。
アルバムを前にして、子どもたちとたくさんお話をしてもらうため。
たくさん遊んだら、お腹がすきますね。
今日の献立は、「しらす丼」「根菜たっぷり汁」「りんご」です。
「みんな、『根菜』って、何か分かる?
(子どもたちが口々に発言)…そうそう、
じゃがいもとか、ごぼうとか、にんじんとか、
土の中で育つ野菜のことです。」
「手を合わせましょう。食事のあいさつをしましょう。
この食べものは、おひさまと、水と、土からできました。
たくさんの生きもののおかげで育ちました。
育ててくれた自然や、すべての人に感謝して、いただきます!」

「いただきます」という言葉の意味を、
みんなでしっかり感じながら、食事をします。
農吉の保育所では、給食を(おやつも)所内の調理室で手作りしています。
素材は、
自社農園(農吉ファーム)で、自分たちで育てているコシヒカリや野菜。
地元農家さんが育てている野菜。
どれも、農薬や化学肥料の使用はほぼ使わない、あるいは使うとしても極少量です。
出汁は、毎日とります。調味料も、手間をかけてつくられた「ホンモノ」を使います。
野菜は、子どもたちの発達に応じて、同じ献立でも大きさを変えて切っています。
旬や、日本の文化や風習が感じられる献立を工夫しています。
乳児クラスでは、子どもに合わせて離乳食を作っています。
食器の片づけも、子どもたちが自発的に手伝ってくれます。
いなほ(5歳児)より小さな子どもたちは、お昼寝の時間。
いなほのみんなは、ホールで絵本を読んでもらいます。

いなほ②組の保育士Kさんと、
午前中の外遊びのときの子どもたちについて、
気づいたことを情報共有して。
子どもたちの連絡帳に記入して・・・。
少しずつ、おやつの準備を始めます。
炊きあがりを待ちながら、自由時間
ときどき、けんかやすれ違いが起こることも。
そんな時も、「それはダメ」とか「こうしなさい」とは言いません。
大人が解決、結論を出そうとしないようにしているそうです。
できるだけ、トラブルが起こったときの状況を思い出してもらって。
「Yくんは、その時こんな気持ちだった、って。」
言えなかった気持ちを代弁するように。
双方が納得できるように。
トラブルを、いい機会として学べるように。

さあ、ごはんが炊き上がりました!
炊きたてのごはんに、春、摘んだ桜を塩漬けしたときにできた
「さくら塩」を混ぜただけの塩むすびです!
あっという間に食べ終わった子どもたちが、
「おかわり、あるー?」とやってきます。
羽釜も、あっという間に空っぽに…
炊き立てごはんは、子どもたちに一番人気のある
おやつのひとつだそうです。
おやつのあと、終わりの会までは、
自由に室内遊びをして過ごします。
「今日の絵本は、『おそうじやさん はじめます』です」。
絵本のあとは、みんなで部屋のおそうじをしました。
みんな、絵本の主人公になりきったのか、少しの時間できれいに片付きました!
「さて、みんなにお知らせがあります。明日のこと。
明日は、前に掘ったお芋を、焼き芋にしまーす。」
「やったー!」
「でも、まだ洗ってなくて、土がついています。
焼き芋にするには、どうしたらいいかな?」
焼き芋の作り方を、一緒に考えます。
ここで、Yちゃんから質問が出ました。
「明日は、何で焼くんですか? どうやって焼き芋つくるんですか?」
「今日、ごはんを炊いた残りの木を使います。でも、少なくて足りない。」
みんな、考えます。
「どうしたら良いでしょう?」
「葉っぱを拾ってくる!」
「いっぱい葉っぱがある所があったら、明日教えてくれない?
今日、おうちの人と車に乗って帰るときに、聞いてみてください。」
「いいよー!」
「ありがとう!」
ふだんから何気ないやり取りの中でも、子どもたちが疑問をすぐに口に出せるように、問題解決のために考えるように、声をかけているという右代谷さん。
「すぐに答えられないような、鋭い質問が来ることもあるんですよ。
そんなときは、その場で流さず、『調べてくるから、ちょっと待って』と言って、待ってもらいます。
後日、きちんと答えるようにしています。」
保育士は、子どもたちよりちょっと先輩ではありますが、子どもたちと対等な関係なのです!
この曲は先日、平成30年7月の広島豪雨災害後、一部不通が続いていたJR芸備線が全線運転再開したことを受けて、
備後庄原駅で行われた記念セレモニーで、みんなが披露した歌。
外はちょっぴり暗くなってきました。
保護者の方がお迎えに来られるまで、
しっかり子どもたちと過ごします。

お迎えに来た保護者の方には、
できるだけ今日のできごとをお伝えします。
いなほ組の子ども以外でも、お会いした保護者の方にはできるだけ、
子どもたちの良いところ、今日の姿をお伝えしています。
保護者さんと信頼関係を築いていくきっかけにもなります。
保護者の方の中には、「実際、ちょっと難しい」人もいる、そうです。
悲しい気持ちになったり、困ったりすることもあるけれど、
そんなときは、同僚や先輩の保育士さんに話を聞いてもらいます。
農吉の保育所には、定期的に来てくださる臨床心理士さんもいます。
心がモヤモヤしている保護者の方にお勧めすることもあれば、保育士自身が相談することもあります。